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2008年12月

甲にも個人差

都会生活は、甲をくっつけやすいと前回書きました。

でもスタジオを見回してみると、甲がよく出る人が何人かいると思います。

彼女たちは都会で生活していないのだろうか。。

おそらくそんなことはありません。

これは個人差の問題です。

たとえば身長。

ある年齢の大人の人を無作為に百人集めると、背の高い人もいれば背の低い人もいて、かなりばらつくと思います。

仮に成長期にある10歳に注目して、10歳の子供を百人集めたとしても、背の高い子もいれば背の低い子もいてかなりばらつくと思います。

身長を伸ばす早寝早起き朝ご飯と、外遊びなどの運動をしっかりやっている子供に限定してみると、やっていない子よりは大きいかも知れないけど、やはり、背の高い子もいれば背の低い子がいると思います。

体重について調べても同じようにばらつくと思います。

人のからだについて調べてみると多くの場合、上記のようなばらつきが見られます。

甲についても同様です。

年齢や生活環境などある程度条件をそろえたとしても、甲がよく出る人と出ない人がでてきます。

単にばらつくとはいえその一方で、甲が出やすくなる、あるいは、出にくくなる環境があることも事実だと思います。

ですので、ひとり一人が自分の置かれた環境を少しでも甲が出やすいものに変えていくことで、今よりも甲が出やすくなる可能性が高まります。

たとえば、石畳の多いヨーロッパへ引っ越すとか。未舗装路の多い田舎へ引っ越すとか。

でもこれは現実的ではありませんね。

そこでちょっと考えます。

環境とは外のことだけではありません。

中の環境も考えられます。

たとえば、日々青竹を踏むようにするとか、砂の上でルルベで立つ練習をするとか。

要するに努力系の環境のことです。

これなら工夫次第で色々なことができます。

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くっつく甲

関節の特徴のひとつに「くっつく」というのがあります。

くっつくといっても完全にくっつくわけではありません。

骨と骨が向かい合って接しているところが関節。
でも直接骨どうしが接しているわけではなく、あいだに滑りをよくする滑膜や軟骨があります。そして、関節をまたぐように靭帯や関節包がついています。

人間のからだには、環境に適応するという性質があります。

たとえば、北海道のひとは沖縄のひとより寒さに強かったり、ギターをしょっちゅう弾いている人の左手の指先はカチカチに硬くなっていたり。

バレリーナがもっとも気にするからだの一部が「甲」です。

実はその甲はからだの中でも、たくさんの関節が1カ所にあつまっているという特徴があります。

関節がたくさんあるにもかかわらず、膝や指のようにたくさん曲げ伸ばしできるわけではありません。

なぜなら、ゴムバンドのような靭帯でガチガチに覆われているからです。関節面の形も一役買っています。

ようするに、あまり動かないということです。

あまり動かないところを本当に動かさないでおくとどうなるでしょうか。

人間のからだは環境に適応すると書きました。

関節もしかりです。

つまり、動かされない関節は動かないようになってしまうのです。

わずか50年ほどまえまで、道路は舗装されておらず凸凹道が普通でした。凸凹道を歩けば甲の関節はよく動いたことでしょう。

でもいまは都会ではどこへ行っても平らです。室内でも室外でも凸凹のところを歩く機会はほとんどありません。

しかも、靴は底がしっかりしています。地下足袋やわらじで未舗装の道路を歩いていた頃が羨ましい。

何がいいたいかというと、都会生活では甲の関節はあまり動く機会がないのです。

動かないという環境に適応した関節はどうなるかというと、動かなくなるのです。

つまり、甲の関節がくっついてしまうのです。

甲の関節がくっついた結果、甲が出にくくなるのです。

甲が出ない原因は他にもありますが、どうも甲が出ないとお悩みの方は関節のくっつきを疑ってみてください。

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手を放しても脚を高く上げたい

ストレッチを十分していたり、もともとからだが柔らかい方の中には、ア・ラ・セゴンドに手で脚を持ち上げると高く上がるのに、手を放すとガクンと脚が下がってしまうという方がいます。

どうしたら高く上がるようになるのでしょう。

とりあえず思いつくことは、ストレッチか筋トレでしょうか。

上記の場合、柔らかさは十分なのでストレッチでは解決しないことは予想できます。

残るは筋トレです。

では、どんな筋トレが有効なのでしょうか。

セラバンドなどできつい負荷をかけて、タンジュを繰り返したらいいでしょうか。

コアとなる腹筋を付けたらいいでしょうか。

やり方を考える前に、そもそもア・ラ・セゴンドに脚を上げるとはどうゆう動きなのか簡単に考えてみましょう。

冒頭の動きで求めているのは、グランバットマンでの勢いのついた動きではありません。

デベロッペなど、ゆっくりした動きです。

つまり、1)ゆっくりと脚を上げて、2)上げきったところでキープして、3)ゆっくり下ろしてくる、という三種類の動きです。

これは筋肉の収縮様式で見ても三つに分けられます。

1)ゆっくりと脚を上げる
脚には重みがありますから、この時の筋肉は重みに打ち勝って縮んでいます。

2)上げきったところでキープする
ここでは脚の重みとつり合って、縮んだまま動かないでいます。しかも、筋肉の長さは一番短くなった状態です。

3)ゆっくり下ろしてくる
脚の重みでストンと落ちてきそうになるところをグッとこらえてブレーキをかけながら、ゆっくりと筋肉が伸びていく状態です。

先ほどの動きは、これら三つの収縮様式が合わさった動きだったのです。

ところで、筋肉の特性として、各収縮様式はその収縮様式で鍛えられる、というのがあります。

つまり、

1)ゆっくりと脚を上げたければ、ゆっくりと脚を上げることで鍛えられる。
2)上げきったところでキープしたければ、上げきったところでキープすることで鍛えられる。
3)ゆっくり下ろしたければ、ゆっくり下ろすことで鍛えられる。

ということになります。

そうなると、先に書いたように、セラバンドで抵抗を加えながらタンジュを繰り返す鍛え方は的外れであることがわかります。

では、どうしたらよいか。

まとめると次のようになります。

1)ゆっくりとア・ラ・セゴンドに脚を上げる。
2)手でア・ラ・セゴンドに脚を持ち上げておいて、その手を放してキープする。
3)手でア・ラ・セゴンドに脚を持ち上げておいて、その手を放してゆっくり脚を下ろす。

実践するときは、カウントを使うとわかりやすくなります。「ゆっくり」を「5カウント」に置き換えます。つまり、「いち、に、さん、し、ご」と数えながら動作するようにします。また、手で持ち上げる代わりに、バーに脚をのせる方がやりやすい場合もあります。

すると、

1) 5カウントかけてア・ラ・セゴンドに脚を上げきり、ストンと脚を戻す。これを5回繰り返す。

2) 手でア・ラ・セゴンドに脚を持ち上げておいて(または、バーに脚をのせておいて)、その手を放し(または、バーから脚を放し)5カウントキープした後、ストンと下ろす。これを5回繰り返す。

3) 手でア・ラ・セゴンドに脚を持ち上げておいて(または、バーに脚をのせておいて)、その手を放し(または、バーから脚を放し)5カウントかけて脚を下ろす。これを5回繰り返す。

となります。結構きついです。

もし軸脚の膝がつらくなるようなら、イスに座った状態で行っていただいても結構です。

週何回やったらいいか。

ベストは3回です。

たとえば、月・水・金か、火・木・土。

あるいは、右脚を月・水・金、左脚を火・木・土。

同じ脚、あるいは両脚とも毎日行うより、上記のように間を空けた方が効率的に鍛えられます。

速ければ3週間くらいで変化が実感できると思います。

お試しあれ。

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週三以上での上達法

前回、レッスンの回数が増えるとかえって上達しにくくなることがあると書きました。

でも、レッスンをたくさん受けたくてしょうがない気持ちもわかります。

しかも、上達をともなって。

そんなことできるのでしょうか。

できます。

できるようになる答えを書く前に、できなくなる状況を確認すると、戦略がないまま日々のレッスンをこなしてしまうような状況がそれです。

何曜日の何時には何処どこでレッスンを受ける、という受け方です。

これは、単にレッスンをやっつけ仕事のようにこなしているだけで、上達のパズルのピースが埋められていくことはありません。

でも、からだが動かせている満足感や、レッスンをこなせている達成感は満喫できます。

では、上達につながるレッスンの受け方はどのようなものかというと、目的別の受講となります。

前にも書きましたが、筋肉的には負荷が加わると2日以上休ませる必要があるわけですから、週三回以上のレッスンで毎回同じようにからだを使っていては、負荷がかかる部位が特定されてしまいます。

壊された筋肉が回復する前に次のレッスンが来て、同じ筋肉を壊すということを繰り返すことになります。

これでは筋肉は鍛えられません。

ボディビルなどの例を見ると、毎日のようにジムに通っていても、鍛える部位を日々変えることで、ほどよく休息期間が得られるようにローテーションを組むようです。

これをバレエに応用すると、脚を頑張る日と、体幹を頑張る日と、腕を頑張る日などに振り分けてみるという方法が考えられます。

また、バレエの構成要素として、音楽性やステップのボキャブラリー、感情表現などさまざまなものがあげられます。これらの中から日替わりで優先するテーマを変えていくことでレッスンにメリハリがつきます。

音楽性一つとっても、まずは拍子や小節数を把握して音通りに正確に動くように努力する。次に、小節のかたまりに対してどのステップが対応しているかをしっかり押さえる。音の食いや溜めを動きで表現する。などなどいくつか課題を設定することができます。

ボキャブラリーにしても、あるステップのフランス語での意味から、動きの正確な定義を毎回確認し、動きの発展型も意識する。などなどです。

こうすることで、漫然と同じことを繰り返すようになりがちなレッスンが、頭もからだも忙しい、メリハリのついたレッスンに変わってきます。それでいて、負担のかかる部位も意図的に移り変わらせることができ、効率的に筋肉を鍛えることができます。

とはいうものの、これをやろうとすると音楽についての知識が必要になりますし、ボキャブラリーについてはバレエ辞典などで動きの定義を勉強しておく必要もでてきて、レッスンのときだけバレエのことを考えているようでは間に合わないことがわかります。

つまり、日常的にもバレエに対して時間を割かねばならなくなってきます。

そこに時間や労力を投資する必要が出てくるわけです。

そうなってくるとますます敷居が高くなってきますね。

どこまでできるかは各人各様だと思います。

続く...

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レッスン間隔

からだを鍛えるとか、改造するというと、真っ先にイメージするのが筋トレではないでしょうか。

筋トレをすると筋力がアップしたり、筋肉が太くなったりします。

「努力は必ず報われる」という言葉がありますが、こと筋トレに関しては当てはまりません。

どういうことかというと、筋トレすればするほど筋肉が鍛えられるかというと、そういうわけではないということです。

ちょっと筋肉について詳しい方ならもうおわかりかと思いますが、超回復という現象を起こすことで筋肉は鍛えられます。

この超回復を起こすには、筋肉を壊す努力が必要です。重たいバーベルを持ち上げたり、体重を利用したりして、繰り返し筋肉にダメージを与えることで、少しずつ筋肉線維が壊れていくわけです。

壊された筋肉は、「回復」しきったとき、壊す以前よりも少しだけ強くなっているわけです。ここでポイントになるのは「回復」するには、それ相応の時間が必要ということです。その時間のことを休息と呼びます。

回復し終わる前にまた筋肉を壊してしまうと、十分な回復が得られないため、筋力アップにつながりません。これは休息不足ということになります。

では、どの程度の期間休息をとるとよいのかというと、2日以上といわれています。これもどの筋肉をどの程度壊すのかによるので絶対的なものではありませんが、普通にトレーニングした場合の目安とお考え下さい。

この現象をバレエのレッスンに当てはめて考えてみます。

通常、レッスンでは筋トレだけをしているわけではなく、技術トレーニングやリズム感、音楽性、感情表現などなど、いろいろな要素を組み合わせてトレーニングしています。

ですので、単純に筋トレと比較するわけにはいかないのですが、プロのバレエダンサーに要求される肉体的負荷は、ほとんどのプロスポーツの中でアメリカンフットボール選手に次ぐほど過酷であるとも言われるほど厳しいものです。

そう考えると、レッスンでは筋肉的にかなり負荷が加わっていると考えてもあながち間違っていないのかも知れません。

そこで、レッスンの回数について考えてみると、たとえば

週1回なら現状維持がいいところ
週2回なら3ヶ月くらいで多少上達が実感できる
週3回なら1ヶ月くらいで上達が実感できる
週4回なら2週間くらいで上達が実感できる
週5回なら1週間くらいで上達が実感できる

などとなりそうですが、なかなかそうならないケースが見受けられます。

なぜなら、先ほどの休息期間を思い出してください。

週5回もレッスンしていたら、十分な休息がとれなくなっていることは明らかです。ということはむしろ、上達していない可能性が出てきます。

いえ、仮に週5回でもそのレッスンが週5回受けることを前提にカリキュラムが組まれているようなら、上達が期待できるでしょう。

でもそうではなく、単発のレッスンが週5回並んでいるようだと、かなり怪しくなってきます。

そうなってくると「努力は必ず報われる」とは言っていられない状況であることは明らかです。

でもちょっと待ってください。

そもそもなぜバレエのレッスンを受けるのでしょうか。

ストレス発散だとか、心のリフレッシュなんていう理由もありですよね。

そうなってくると、上達や肉体改造は第一の目的ではなくなってくるので、「チョーカイフク」なんて関係なくなってきます。

結局、最適なレッスン間隔はその人の置かれている状況や目的によって違って来るという、当たり前の結論に到達します。

問題は、どの程度客観的に自分が置かれている状況や目的を把握できているのかという点に移ってきます。

続く...

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限られた時間の使い方

普通、上達というと、できないことが一つできるようになり、また一つできるようになりと、階段を上るようにレベルアップしていく様子をイメージすると思います。

つまり、あるステップを「マスター」した場合、それ以前とは違う能力が身についたわけで、そう簡単にはもとには戻らない。そのまま次のステップを「マスター」すればさらに上に行けるというわけです。

ところが、昨日紹介した体操は、一時的に一段高いレベルにからだの状態を持ち上げてしまうのです。

そして、その一段高い状態から動くことになるため、本来のレベルでは経験できない動きや感覚を味わうことができることになります。

このハイレベルになった状態が仮の姿であるところがミソです。

ただし、考えようによっては、これこそが本来のレベルであるともいえます。不必要にかかっていたブレーキを取り外した状態ともいえるからです。これは基準をどちらにとるかということの問題なので、ここではたいして問題にはなりません。

一般には、本来のレベルのまま地道にステップアップを目指すことが多いと思いますが、「仮のハイレベル状態」に持ち上げるワザを身につけると、まるで高速学習しているかのように、いつもより難しいことができたり、はやくステップが習得できるようになります。

ここで注目していただきたいのは、こうやってからだの学習モードを意図的に切り替えられるという視点を持つというところです。

地道に一歩一歩改善していくことが悪いことだとは思いません。でも、せっかくですからご自分を上達させる攻め手の一つとして、そういったワザを取り入れてみるのも良いのではないかと思います。

特に大人の場合、精一杯動ける時間はそう長くありません。限られた時間の中で、少しでも効率よく上達させていくためには、真面目さだけでなく、要領の良さも必要であると思います。

続く...

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片足ルルベを立ちやすくする

一つの答えとして、深部感覚の感度を上げてしまえばよい、というのがあります。

先日、直立に必要なセンサーの組み合わせとして

3) 平衡感覚+深部感覚

を紹介しました。この足し算の答えが大きくなればなるほどセンサーの感度が高まった状態になり、したがって、安定して立てる状態であることになります。

もし、この式にある平衡感覚か深部感覚のどちらか一方を、人為的に高めることができるとしたら、それは安定して立ちやすくなることを意味します。

そんなことができるのでしょうか?

できます。

実験してみましょう。

【実験】
1. まず、片足でルルベに立ちバランスの安定感を調べてください。
2. 次に、両足を大きく開いた大の字に寝て、両手はバンザイします。
3. 息を吸いながら、両足のかかとを強く突き出し、つま先を引きます。
4. 息が苦しくなったら、イッキに全身の力を抜き、3呼吸待ちます。
5. ふたたび片足でルルベに立ちバランスの安定感を調べてください。

5.の安定感を1.と比べてみてください。変化はあったでしょうか。

2.~4.がうまくいけばほとんどの場合で5.のほうが安定しているはずです。

原理を説明すると長くなるので割愛しますが、この体操により、深部感覚の感度が高まるのです。

ということは、直立の安定感が増すので、片足ルルベでの安定感も増すことになります。

これをレッスンに活かさない手はありません。

普通の感度の深部感覚の方がこの体操により、一時的でも感度を上げた状態でレッスンに臨めば、片足ルルベで立ちやすい状態でレッスンを受けることができることになります。

普通の感度のままレッスンを受けた場合と比べると、より上達できることが想像できますね。

裸眼では字が読みにくい方が、眼鏡をかけることで一時的に視力を回復させ、本を読んだりすることと似ています。

根性でからだを改造しようとするのではなく、知識を応用して状況を乗り切ろうというアプローチです。

続く...

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一つ足>二つ足>四つ足

昨日、立っているときのからだの安定性については、四つ足>二つ足>一つ足の順になっていると書きました。

二つ足で立っている人間にとっては、四つ足立ちは動物的立ち方といえます。

からだの制御という点に注目して、二つ足立ちと四つ足立ちのどちらがより高度な制御が必要になるかと考えると、明らかに二つ足立ちになります。これが人間らしい立ち方です。

人間らしく立つためには、動物よりも高度な制御が必要ということになります。

制御が高度になる、難しくなるということは、バランスを保てているかどうかを感じとるセンサーの感度が良くなっているということになります。

そのセンサーがまさに平衡感覚と深部感覚です。

さらに進んで、バレエでよく出てくる片足立ちは、普通の人よりもさらに高度な制御が必要になります。

もっとも制御が難しい立ち方ですから、ある意味、究極の人間の立ち方といってもよいかも知れません。

バレエで要求されるのは人間の究極の立ち方だったのかも知れません。

ともかく、片足立ちには普通の人よりも感度が高いセンサーが必要ということになります。

センサーの感度について順番に並べると、一つ足>二つ足>四つ足となります。先ほどとちょうど逆ですね。

普通に生活している普通の人が、つまり普通の感度のセンサーで、レッスンのときだけ片足立ちでバランスをとろうとか、ましてや踊ってしまおうということがいかに無謀なことかおわかりいただけるかと思います。

片足ルルベでなかなかバランスがとれない、とお悩みの方。それは正常です。

「正常」といわれてももっと解決したい、ですよね。

では、どうすればよいか。

続く...

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内なる声を聴く

人類の進化の過程をさかのぼると、歩行が四つ足だったことがわかります。いつの時点からか、人類は二足歩行へ移行しました。

二足歩行と四つ足歩行では、安定性に大きな違いがあります。

転びにくかった四つ足から、転びやすい二足に移行したわけです。さらにバレエでは、一つ足で踊ることがよくあります。

一つ足と二つ足では、ここでも安定性に大きな違いがあります。

当然のことながら安定性という点では、四つ足>二つ足>一つ足の順になります。つまり、バレエは、もっとも不安定な立ち方をして踊っていることになります。

話を二つ足に戻すと、そもそも、なぜ二つ足で立っていられるのでしょう。

人間が二つ足で直立するとき、三つの感覚を利用しています。

・視覚
・平衡感覚
・深部感覚

です。そして、直立を保つにはこれらのうち少なくとも二つが必要とされています。その組合せを書き出してみます。

1) 視覚+平衡感覚
2) 視覚+深部感覚
3) 平衡感覚+深部感覚

昨日、レッスン中、鏡を見てばかりいると深部感覚が育たないと書きました。

鏡を見るとはまさに視覚情報に頼っている状況です。組合せとしては、上記1)または2)が該当します。

舞台の上のように鏡を見ることができない状況で、たんに直立するだけではなく、複雑な動きをするバレエでは3)の組合せが強化されている必要があります。

視覚とはからだの外の情報です。いっぽう、平衡感覚と深部感覚はどちらもからだの中の情報です。

このように考えると「内なる声を聴く」とは、視覚に頼らず、平衡感覚と深部感覚に頼ることだともいえます。

では、どの程度頼れるか調べてみましょう。

【実験】
・6番に立って、目をつぶりましょう。
・1分間立っていられますか。
・立っていられたとして、からだが揺れてきませんか。

もし、1分間立っていられなかったり、からだの揺れが大きくなっているようだと、上記3)から平衡感覚と深部感覚が頼りない状況にあることがわかります。

この実験のミソは、目をつぶることにあります。目をつぶることで視覚情報がなくなるので、直立に必要な平衡感覚と深部感覚のみで立たざるを得ない状況を作っているのです。

ちなみに、この実験をしたときのからだの揺れ方でその人の性格がある程度わかります。

★前後型★
理屈っぽい。何事も頭で解決しようとし、理路整然と説明したうえで行動するか、逆に頭で納得してしまうとまったく行動しなくなる傾向があります。
からだが前後に揺れた方はこの型に該当します。

★左右型★
感情的。感情の起伏が激しく、腹が減っては戦ができぬとやたら食べたがるか、逆に区切りがつくまで何も食べられなくなる傾向があります。
からだが左右に揺れた方はこの型に該当します。

★回旋型★
闘争的。敵対心を持ちやすく、ことあるごとにトイレに行きたがるか、逆に区切りがつくまでトイレを我慢する傾向があります。
からだが回旋するように揺れた方はこの型に該当します。

あなたはどんな揺れ方をしたでしょうか。性格は当てはまっていたでしょうか。

続く...

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鏡と深部感覚

先日「運動能力」を構成する要素の一つとして「深部感覚」をあげました。

これはいわゆる五感には含まれません。

五感とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のことです。これらはいずれもからだの外の情報を感じとるセンサーのことです。「表層感覚」といってもいいかもしれません。

では「深部感覚」とはどんな感覚のことかというと、からだの中を感じ取る感覚のことです。

早速実験してみましょう。

【実験】
目をつぶって、右手を前に水平に伸ばしてください。
そこから30度下げてください。
さらに30度下げてください。
さらに30度下げてください。

はい、手は真下まで降りてきました。

目を閉じて手を動かしているので自分では確認できませんが、誰かに見てもらえば、だいたい狙った角度通りに手が動いていたと思います。

これって目で見ていないのに不思議ではありませんか。

目以外の何かで手の角度を感じていたはずですね。

その何かが「深部感覚」です。

深部感覚は何も手だけにあるわけではなく、足にも、首にも、背中にも、要するに全身にちりばめられています。

全身にあるから、いちいち目でからだ全体を眺めなくても、だいたい右足がどこでどうなっている、首がどうなっている、背中がどうなっているのかわかるわけです。

レッスン中、やたらと鏡を眺めてからだのラインやポジションを気にしている人がいます。そういう人は、視覚に頼ってからだの各部位の位置をコントロールしようとしていることになります。

これでは、せっかくの深部感覚の出番が少なくなってしまいます。

実際、からだを動かすときに、つねに視覚に頼って動かすのは現実的ではありません。

だいたいステージに鏡はありません。視覚に頼らないと、からだの修正ができないとするとステージでははちゃめちゃな動きをしていることになります。

レッスンでは、鏡を見る前に深部感覚に聴いてから鏡で確認するようにしてみると、ずいぶんと深部感覚が鍛えられてきます。

深部感覚が鋭くなってくると、鏡を見なくても、つま先が鎌になっているとか、骨盤が開いているとか、アゴが出ているといったことが直接感じとれるようになるので、上達が早くなります。

いっぽう、鏡で確認するクセがついているひとは、なかなか深部感覚が鋭くなってこないので、鏡の前では何とかなっても、そうでなければはちゃめちゃになりがちです。

たとえば、センターレッスンで先生に「足が鎌になっているよ」といわれたとして、自分ではそんなこと無いと思っていても、足先に目をやると「あっ、鎌だった」なんてことになります。視覚で確認しないとわからないというわけです。

ということは、上達したければ、深部感覚を鍛えるようにレッスンを受ける工夫が必要ということになります。

続く...

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過程を楽しむことを趣味という

ということは、二つめのアプローチのほうがいいことずくめかというとそうではありません。

二つめのアプローチでは、基本的にバレエそのものは行いません。

皆さんがバレエのレッスンを受ける大きな理由に、バレエが好きだからというのがあると思います。バレエの動きをすること自体に喜びを感じているから、バレエのレッスンを受けるというわけです。

「過程を楽しむことを趣味という」という言葉を何処かで読んだことがあります。

バレエが趣味の方にとっては、バレエの動きをすること自体を楽しみたいわけですから、一つめのアプローチには満足感を覚えます。ところが、バレエの動きをしない二つめのアプローチは退屈になる可能性があります。

「お金を払ってまでやりたくはない」と思うかも知れません。

これが二つめのアプローチのデメリットです。

一方、目先の楽しみよりも、「目標とするステップができるようになることの方が優先だ」と考える方は、二つめのアプローチに満足感を覚えるかも知れません。

そうなると、状況は逆転します。

結局は状況による、ということになるのかも知れません。ただ、上記のような違いがあるということは言えると思います。

続く...

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コーディネーション力がだいじ

「コーディネーション力」についてさらっと書いてしまいましたが、これは結構くせ者です。

フィギュアスケートの高橋大輔選手が有名になるきっかけになったのが、コーディネーション・トレーニングだったそうです。

このトレーニングをするとどんな身体になるかというと、汎用性が高まるのです。汎用の意味は「広くいろいろな方面に用いること(三省堂「大辞林」より)」です。つまり、手足だけでなく首や体幹も、要するに全身が思い通りに動かせるようになるのです。

ということは、種目によらず有益なトレーニングといえます。思い通りに全身が動かせるわけですから、フィギュアスケートの動きをしようとすればそれができるし、バレエの動きをしようとすればそれができるというわけです。

ちょっと実験してみましょう。

【実験1】
右手で三角形、左手で四角形を同時に描いてみましょう。「ぴっ、ぴっ、ぴっ」と言いながら一画ずつ描き続けます。

   ・・・・・・

どうでしょう。
左右バラバラにコントロールしようと脳が働いているのがわかったでしょうか。普段あまり使わない脳の使い方ですので、ちょっと新鮮に感じるかも知れません。

【実験2】
足の一番と二番に交互に着地する感じで、開いて閉じてとジャンプを繰り返します。同時におへその前で手拍子2回、顔の前で手拍子2回を繰り返します。これも「ぴっ、ぴっ、ぴっ、ぴっ」とテンポを合わせます。

   ・・・・・・

ちょっと息が上がりますが、どうでしょう。
今度は左右ではなくて、手足をバラバラにコントロールしようとしているのがわかったでしょうか。

この二つの実験はかなり簡単なコーディネーションです。

こういった、左右のバラバラ、上下のバラバラが発展してバレエの動きになったり、フィギュアスケートの動きになったりしているわけです。

ここでバレエ上達の二つのアプローチが見えてきます。

仮にマスターしたいステップがあったとして、一つめのアプローチは、単純にそのステップを反復するというものです。普通にレッスンして上達しようとした場合は、このアプローチを取っていることになります。

もう一つのアプローチは、コーディネーション力を上げて、目的のステップに必要なバラバラ力を身につける。その後でそのステップをやってみると簡単にできるようになっているというものです。

ステップの難易度が低い場合は、どちらのアプローチでも比較的簡単にマスターできます。

しかし、難易度が上がってくると差が出てきます。

一つめのアプローチでは、同じ動作を繰り返すことになるので、身体への負担が偏ってきます。その結果、オーバーワークになりやすくなります。

一方、二つめのアプローチでは、同じ動作の反復は避けられるので、オーバーワークにはなりにくいです。つまり、上達し続けられるということです。

メリットとデメリットも見えてきます。

一つめのアプローチでは、マスターできるのは目的のステップのみです。別なステップをマスターするにはまたそれなりの反復が必要になります。

ところが、二つめのアプローチでは、同程度の難易度のステップは次々とマスターできるようになっています。

続く..

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技術の構成要素

さて、レッスンを受けていれば、これらのすべてが改善されていくのでしょうか?

おそらく答えは「否」です。
「否」だからこそワガノワ・バレエ・アカデミーではピアノの授業があるのでしょう。

完成されたバレエの舞台は、さまざまな構成要素の集合体です。それぞれの構成要素はそれぞれ別個に磨かれてこそ本物になります。集合体を集合体のまま磨くことはできないのです。

話が散らかってしまったので技術の向上に戻します。
技術と言ってもその構成要素はたくさんあります。例えば次のようなものです。
・解剖学的条件
・柔軟性
・筋肉の質(しなやかさ/強さ)
・運動能力

各要素はさらに細かく分けることができます。例えば、「運動能力」は次のような要素に分けられます。

・コーディネーション力
・筋力
・持久力
・敏捷性
・スピード
・バランス力
・深部感覚
・まねる力

「コーディネーション力」とは、手足を思い通りにバラバラに動かしたり、協調させたりする能力のことです。「敏捷性」とは、すばしっこさのことです。「深部感覚」とは、さまざまな動きの中で手足の位置がどの辺にあるのかを感じとる能力のことです。

運動能力だけでこれだけあるのですから、すべての要素を細分化したらかなりの数に上ります。逆に言うと、これらが総合されてレッスンが構成されているのです。レッスンの中でこれらの要素は同時に要求されたり、次々に切り替わっていったりするわけです。

要素の数が多いだけに、各要素が登場する時間はそれほど長くはありません。何事も鍛えるには時間が必要なわけですが、これでは十分に鍛えることはできないということがわかります。

鍛えられていないので、上達はしません。レッスンしているのに上達しないので焦ります。焦ったらどうなるか。回数を増やすか時間を延ばそうとします。そこに落とし穴があります。

続く...

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バレエの上達

そもそも、バレエの上達とはどういう事なのでしょう。
「難しいステップがこなせるようになる」
これは技術の向上ですね。でもこれだけではないでしょう。
例えばパ・デ・シャができても、パ・デ・シャの意味がわからなければ本当のパ・デ・シャにはならないはずです。
柔道の一本でも、外国の選手が言葉の意味を知らずに、単なる音声記号として"Ippon"と言っているだけだとしたら、日本人としては「それでいいのかな?」と首をかしげたくなります。バレエでも同じです。フランス人に首をかしげられたくはありません。これは理解の問題ですね。バレエ用語の意味の理解度を高めることも上達の一部です。でもこれだけではないでしょう。
英語では、on the music, in the music, into the music と言います。on the music は音通りに正確に踊ること。in the music は音を少し食ったり、もたったりして微妙なニュアンスを出すこと。into the music は音楽に完全にとけ込み一体化して、時間的空間的表現をすること。音楽的表現力の問題です。でもこれだけではないでしょう。
他にもいくつか考えられますね。

続く...

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バレエの技術と身体

皆さんはバレエのレッスンに何を望んでいますか。

・上手になりたい

・身体を柔らかくしたい

・スリムになりたい

・ストレスを発散したい

・舞台で踊りたい

などなど。他にもいろいろあるでしょう。そして、これらを求めてレッスンを受けるのが一般的ではないかと思います。

ところが、です。

まじめにレッスンを受けていても、身体は柔らかくならないし、スリムにもならない、ということが往々にして起こります。

なぜかというと、バーレッスンやセンターレッスンは技術の習得が主となっているからです。さらにいうと、すでに身体が柔らかくて、スリムな人を対象としているからです。

つまり、レッスンした結果、身体が柔らかくなったり、スリムになったりするわけではないのです。

「じゃあ、どうすればいいのよ。」と思った方は、レッスンの外で身体をやわらかくするなり、スリムにするなりの努力をしておく必要があるということになります。

ピラティスやヨガで身体作りをするのも良し、整体でするのも良しです。状況や好みに応じて選んで構わないと思います。

もし、そういった方法を使わないで、レッスンに臨むことですべてを解決しようと努力するとどうなるでしょう。毎回まじめに、しかも回数多く受けようとするのではないでしょうか。

ちょっと待ってください。

バレエとはそんなに単純なものではありません。盲目的に努力するとバレエがあだとなって帰ってきます。

どんな風に?

続く...

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