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2009年6月

白鳥の重み

今朝自転車に乗っていたら、カラスの「かぁー」という声がすぐ頭上で聞こえた。見上げると電柱の上に大きなカラスが留まっていた。そのまま走り去ろうとしたところ、頭にドンという衝撃。それなりの重みを感じた。固体というよりは柔らかい質感。どうやら先ほどのカラスが降りてきて、頭を一撃してくれたようだ。睨まれたことへの仕返しだったのだろうか。

その後、何事もなく自転車をこぎながら、心はフランスへ飛んでいた。

もう十年ほど前になるが、フランスのストラスバーグに住むフランス人の友人のセカンドハウスへ遊びに行ったときのこと、アルザス地方の自然の中を仲間数名で車で移動していた。友人は週末になるとよく自転車でこの辺りを走り回っているとのこと。

当方は草原や池など次々と変わる自然の風景の美しさに感動を覚えながら、自宅から自転車で行ける距離にこんな美しい自然が、当たり前のように存在している生活に憧れを覚えたものである。しかもその家(セカンドハウス)は週末専用の家だという。平日は都市部の家で通勤時間を短くし、週末は郊外で自然に囲まれて暮らす。なんという身軽でメリハリのきいた生活。ひょっとして友人はハイクラス?と思いながら聞いたところ、フランスではそんなに珍しいことではないという。

彼我の距離は計り知れない。大前研一さんに頑張ってもらうしかないのか。

話がそれたが、車が池のほとりに近づいたところで、オオハクチョウが数羽いるのを発見。たぶんオオハクチョウ。なにせ大きい。

車から降りて、歩きだすと、先方も当然気がついていて警戒しているのがわかる。まあ、突然車が近づいてきて中から人間がぞろぞろ出てくれば警戒もするだろう。

オオハクチョウの写真を撮ったり、仲間うちで立ち話をしたりしていると、明らかに一羽の挙動がほかと違うことに気がついた。

私の動きに反応しているのだ。どういうわけか、私が動くととても警戒するのである。珍しいこともあるなとは思っていたが、別段何するわけでもなく仲間と歩いたり立ち話をしたりして数分が経った。その間、そのオオハクチョウが気にはなっていたのだが、なんとそのオオハクチョウが私を威嚇し始め、ずんずん私の方へ近づいてくるではないか。

あれ、どうしたんだろうと思ったのも束の間、突進してきたオオハクチョウに体当たりされてしまったのである。

「ドン」と体で感じた質感と重量感。

ほかでは経験できない、おそらくもう二度と経験できないであろうあの質感と重量感。

バレエに登場する白鳥はいつも可憐で美しい。だが、私の場合、あの突進を受けてから、バレエに出てくる白鳥を見ると可憐な美しさに、あの質感と重量感がノイズのように加わってしまうのである。

カラスの一撃で、あのオオハクチョウの一撃が呼び起こされた朝でした。

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