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2014年7月

「膝が伸びないんですけど...」

バレエを習っている方から、
よく頂くご相談の一つが、
これ。

「膝が伸びないんですけど...」

特に、
本気で上達したい方や、
プロを意識している方に多いように思います。

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普通に生活している分には、
ほとんど気にならないけど、
いざバレエとなると気になる。

しかも、

「少しでも高く脚を上げたい」

と思っている方にとっては、

喉から手が出るほど欲しいもののひとつ。
(これには機構的利点があるのですが別な機会に)

なので、
悩みも強くなるのは自然なことですね。

膝を伸ばすことに関しては、
YouTubeの動画などでときどき目にするのが、

伸ばした膝の上にお友達や指導者が座って、
無理やり膝を伸ばそうとしている映像。

要するにストレッチですね。

いわゆるストレッチの原理からすると、
膝が伸ばしきれないなら、

「とにかく伸ばせば良い。」

となります。
そういう意味では、
正しいですね。

でも、です。
これから書くことは、
おそらく多くの方は、知らないことです。

ストレッチの危険性を知っている方からすると、
無理なストレッチをすると、、、

・筋肉がかえって硬くなる(伸張反射)
・ピキッと痛みが走って伸ばせなくなる(肉離れ)

これを避けるために、

「無理なストレッチはいけない」

と考えるかと思います。
それは正しいです。

が、
この記事を書いたのは、別な理由からです。

冒頭の

「膝が伸びないんですけど...」

というとき、
膝が伸びない理由は何だろう
と考えてみてください。

もし、膝裏の

・筋肉が硬い
・腱や筋肉が短い

といった可能性を疑うなら、
ストレッチは有効に働く可能性があります。
ただし、正しく行った場合に限る。

でも、
膝が伸びない理由が
他にあったらどうでしょうか?

例えば、
床の上に座って、
脚を前に伸ばした状態では、
膝がまっすぐに伸びている。

でも、
立って踊っているときは、
膝が伸びきらない。

としたら、
これは膝裏が硬いとか、
短いとかいうことが理由ではありませんね。

踊っている時、
あるいは、
動いている時に限って、
膝が一時的に伸ばしきれないでいる状態
ということです。

これは、
膝そのものが硬いのではなくて、
動いている時の筋肉の使い方の問題。

なので、
ストレッチでは改善しません。

筋肉を正しく使えるようになれば、
膝はスパッと伸びます。

ある意味、
宝の持ち腐れ状態
ということです。

では、
他に膝が伸びない理由があるでしょうか?

はい、あります。

膝の構造から来るものがあるのです。

どんな構造?

膝は関節ですね。
膝上の大腿骨と膝下の脛骨からなる関節です。

膝を曲げた時、
この二つの骨と骨の隙間は広がっています。

一方、
膝を伸ばすと、
骨と骨の隙間は、
だんだん狭くなります。

そして、
まっすぐ伸ばした時に、
もっとも狭くなります。

その狭くなった隙間には、
半月板と呼ばれる軟骨が挟まっています。

この半月板。
名前が「半月」ですから、
月とはいえ、
「満月」のように円(○)にはなっていません。

「C」のように、
円の一部が欠けているのが正常です。

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と、ところが、、、

人口のある一定割合で、
この半月板(C)が満月状(○)になっている人がいるのです。

「だから、何?」

はい、先ほどの膝の上と下の骨。
膝を伸ばした時に 隙間がもっとも狭くなると書きました。

そのとき、
正常だと、
Cのように欠けている部分があるので、
骨と骨はとても近づくことができます。

でも、
もし、
満月のように、
○になっていたら、
骨と骨がこの軟骨を挟んでしまいます。

本来ないはずのもの(軟骨)があるので、
ガチっとぶつかってしまうのです。

この時、
膝は伸びきっていません。

このこと(構造上の問題)を知らずに
この膝を見た人(教師を含む)は、

「膝裏が硬いから伸びない」

と思い込んでもおかしくないですね。

でも、
そう信じてストレッチをしたところで改善しません。

そこでどうするか。

「もっと強くストレッチすれば伸びるはずだ」

と考え、
伸ばした膝の上を押したり、
座ったりしてしまうのです。

でも、
膝は伸びません。

挟まっている軟骨がなくならない限り
膝は伸びないのです。

先ほど、
人口のある一定割合で、
こういう半月板を持っている人がいる
と書きました。

「どれくらいの割合?」

はい。一説には、アジア人の場合、8〜15%。
参考文献:(Innervate The World!

バレエの1クラスに、
1人もいないこともあるけど、
1人か2人いても珍しくない、
という程度。

いかがですか?
意外と身近な感じがしてきませんか?

でも、
もし、
先生がそのことを知らないと。。。
生徒がそのことを知らないと。。。
親もそのことを知らないと。。。

一丸となって、
膝のストレッチをし続けてしまう
かもしれません。

当方は、
かなりの可能性で、
この状態になっているケースがあると推測しています。

以前、
当方にアドバイスを求めてきた、
プロ志望の小学生がいました。

彼女の悩みは

「膝が伸びないんですけど...」

とても熱心な生徒さんで
まじめに体づくりとレッスンを続けてきていたことを察しました。
そこで、当方はこれを疑いました。

そして、
膝を調べると。。。

ストレッチが無効であることが、
一瞬で感じ取れました。

そして、
彼女に「MRI」での検査をすすめて数週間後。

案の定。

満月(○)でした。

この満月になった半月板のことを

「円板状半月板」

と呼びます。
ネットで検索してみてください。
すぐに理解が深まります。

いままでに
この「円板状半月板」を持っている生徒さんには
何名にも遭遇しています。

当方が指摘してわかったケースもあれば、
すでに医師の診断を受けてわかっていたケースもあります。

では、
彼女たちはその後どうなったでしょうか?

いま、
現役のプロとして活躍中の方もいれば
バレエを諦めて、
他の分野に転向した方もいます。

諦めた方は、
円板状半月板だから諦めたわけではありません。
他の理由です。

ということは、
この円板状半月板は、
決定的な要因にはならないということです。

もちろん、
バレエダンサーに望まれる身体条件としては、
プラスにはなりません。

でも、
そういうものは他にもたくさんあります。

・身長が低い
・甲が出ない
・リズム感が悪い
・体が硬い
などなど。

バレエダンサーを目指すには、
不向きな条件はいくつもあります。

身長が低くても、
世界的に活躍しているバレエダンサーは何人もいますね。

欠点があっても、
活躍できる実力を身につけた結果です。

他の条件も同様。

それがあるだけで、
100%ダメということはなく、
プロとして活躍できる実力を身につけられれば、
プロになれるし、
身につけられなければプロにはなれない。

円板状半月板も
その中の一つに過ぎません。

かと言って、
円板状半月板であることを
まったく気にしなくていい
と言うことではありません。

むしろ、
気にした方がいいです。

でも、まずは、
客観的事実を知ることです。
円板状半月板の場合、

「膝裏が硬い」

と思い込んで一生懸命ストレッチしても、
結果が得られないことは
もうお分かりいただけるでしょう。

「知らなかった」

ことの代償は、
怪我かもしれないし、
挫折かもしれない。

でも、もし

「知っていたら」

対策を立てて、
プロになれたかも知れないし、

怪我をする前に
方向転換を図れたかもしれない。

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円板状半月板は、
一つの例に過ぎません。

プロになることを阻害する要因は、
他にもいくつもあります。

その存在を知らずに、
本人が好きだから、とか
親として応援したいから、とか
教師としてプロを育てたいから、、

といった、
当事者にとっては、
肯定的で積極的な思いに突き動かされて
判断し行動することが
日本のあちこちで繰り広げらていると思います。

それ自体は決して悪いことではありません。

でも、
その中に、
一定割合で
何らかの悪条件が潜んでいるのも事実です。

もし、
あなたのお子さんを
バレエだけでなく、
人生の成功へ導きたいなら、

そういった悪条件の有無を
少しでも多く認識した上で、

・やるべきこと
・やるべきでないこと

を選択し、
行動できるようになることが
親の努めであるし、
本来やるべきことではないかと思います。

もちろん、
すべてを知ることはできません。

場合によっては、
十分な知識を持った
教師や専門家に助言を求めることも必要でしょう。

そういう方たちと協力体制を作ることも
親御さんの役割の一つ
と考えてもいいかと思います。

でも、その前に、

ご自分の子どもをバレエダンサーに育てるためには
何が必要なのか
もう少し知識が必要、

とお考えであれば、
学ぶべきです。

もしいま、
十分な知識がないのであれば、
予想に反して間違った判断をしてしまう可能性は高いです。

人の意見にも流されやすいし、
自分の不安や思い込みにも流されやすい。

その結果、
不本意な未来を迎えるかもしれません。
(それはそれで一つの人生)

でも、いま以上に
知識やより良い協力体制を手に入れた上での判断であれば、
不本意な結果に終わる可能性は低くなります。

ただし、
完全に結果をコントロールすることはできません。
それは誰にもできないことです。

100%当たる宝くじは手に入らないのです。

そのことを踏まえた上で、
親としてできることを最大化する。

そして、
その結果を受け入れる。

その覚悟を持つことができたら、
きっと素晴らしい未来が手に入ります。

あなたのお子さんだって、
例外ではありません。

日本から、
世界に羽ばたくバレエダンサーを
次々と輩出させましょう。

最後までお読み頂き、
ありがとうございました。

 

 

●追伸
バレエ留学を成功させるには、
5つのプリンシプル(原理原則)があります。
これを学びプロになったバレエダンサーが、
今現在、何名も国内外で活躍しています。
次に、彼・彼女たちに続きたいなら...
http://goo.gl/qnsMyT

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